いつの時代も話題になり、発掘の度に新しい発見や仮説が立てられるのがエジプトのピラミッドです。
多くの謎の内、最大の謎のひとつは、ピラミッドが作られた目的です。
今回は、ピラミッドが作られた理由の数々の説をご紹介させていただくと共に、ピラミッドの内部構造と形状の意味について考えてみたいと思います。
エジプトのピラミッドの概要と特徴:
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ピラミッドの数:
現在確認されているピラミッドの数は138個(棟)です。
ピラミッドが作られた時期:
最初に作られたジュセル王のピラミッドは紀元前2630年ごろ, ギザの巨大なピラミッドは紀元前2530年ころに建造されたと言われています。
その後、ピラミッド建造数は減少していき、最後に作られたのは、紀元前16世紀ころです。
ピラミッドが建造された期間は、およそ1100年間だけです。
ピラミッドの特徴:
- 四角錘の形状
- 巨石を何万個も積み上げて作られている
- ナイル川の西側に建てられている
ピラミッドが建てられた目的(説):
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王の墓説:
以前から、もっとも多くの研究者に支持されているのが、王の墓として建設されたものだという考え方です。
しかし、この説の難点は、実際にピラミッドの内部からミイラが見つかるというケースがほとんどなく、同じ時代に作られた王の墓が別の場所で発見されるというケースもでてきており、現在も謎になっています。
公共事業説:
ドイツ生まれのイギリス人物理学者にしてエジプト考古学者でもあるクルト・メンデルスゾーンは、1974年に出版した「ピラミッド謎」“The Riddle of the Pyramids.” の中でピラミッド建設の役割は、公共事業であったのではないかと仮説を立てています。
当時、ナイル川が頻繁に氾濫したことが確認されており、国家としては、職を失った農民たちに雇用を提供する必要があったというものです。
しかし、建設の目的はやはり王のための葬祭建造物であったとしています。
メンデルスゾーンの見解が貴重な点は、建設の目的が必ずしもひとつの理由だけでなく、複数の目的があったとしている点です。
宝石や穀物などを保管する倉庫説:
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宝石は腐ることがありませんが、エジプトでは穀物をどこに保管していたのでしょうか?
いつの時代でも、穀物のあるところ、ネズミが発生します。
ネズミによる穀物被害を防ぐのはなんといっても、猫です。
猫を家畜化したのは、一説にはエジプトが発祥だったとしている研究者もいます。
砂嵐を防ぐ防砂壁説:
もし、本当に防砂壁であったのであれば、どうしてある特定の時代にだけピラミッドが建設されたのでしょうか?
また、砂を防ぐためにどうして、四角錘である必要があったのでしょうか?
多くの疑問も残りますね。
日時計説:
方向にこだわってピラミッドが建てられていることは間違いありませんし、四角錘である意味もそこにあるのかもしれません。
しかし、なぜ、日時計という目的だけで、あれだけの大きな建物を作らなければならなかったのでしょうか?
ピラミッドの内部の構造と外形になにか意味があるのか?
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アントワーヌ・ボビーの発見:
1930年にクフ王のピラミッドを見学に来ていたフランス人, アントワーヌ・ボビーはピラミッド内に迷い込んで死んだ猫の死骸を発見しますが、彼を驚かせたのは、その死骸は腐敗しておらず、脱水症状のままだったことです。
帰国したアントワーヌは、1メートル弱四方の四角錘(ピラミッド)を実際に作り、その中に動物の肉片や内臓を入れて観察しました。
その結果、数日経っても、その肉の腐敗が進行しなかったのです。
そして、アントワーヌは仮説をたてました。
「ピラミッドの形状である四角錘には、腐敗を遅らせ、ミイラ状にするピラミッドパワーがある」というものでした。
吉村作治先生の考え:
エジプト学者の吉村作治先生もピラミッド内部に「防腐効果」があることには同意されています。
しかし、吉村先生は、ピラミッド内に防腐効果を生じさせている理由は、形状が四角錘だからではなく、ピラミッドに使用されている石材の石質が磁性体であり、中でレナード効果がおこっているためだとしています。
「レナード効果」とは、1892年に物理学者フィリップ・レーナルトが滝や噴水など水しぶきの多いところに生じるマイナスイオンが豊富な状態を理論的に説明したものです。
いずれにしても、ピラミッドの内部は、カビの発生防止と消臭、殺菌作用があり、腐敗を遅らせる構造になっている点は多くの研究者が同意している点です。
なぜ、ピラミッドは、三角形の組み合わせでできているのか?:
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ピラミッドが三角形の組み合わせでできている点にも、なにかしらの意味が込められていると考えています。
古代においての三角形及び“3”の意味:
- 三角形を数字表記にすると3角形。3は「始まり」「中間」,「終わり」を表していて三角形は最も神聖視された形でした。
- 「3」は母性を表す数字とも言われ、「産む」「育てる」「成長する」という意味がありました。
- 古代から「3」は安定を示す数字でした。
三角形の組み合わせである六芒星(ろくぼうせい)とは?:
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六芒星の形状とは?:
逆三角形“▽”と正三角形“△”を組み合わせた形状です。
三角がふたつ組み合わされた形状です。
今でもイスラエルの国旗には、この六芒星が使われています。
六芒星の意味とは?:
逆三角形“▽”は、“火”や”男性エネルギー”の象徴とされており、正三角形“△”は”水”や“女性エネルギー”の象徴だとされてきました。
これが組み合わさることの意味は、”隠と陽”, “光と影”, “プラスとマイナス”など、相反するものであるものの、互いを必要とし補うことができることから“調和”や”融合”を表しています。
自然界の存在する六芒星の形状:
六芒星の形状は自然界に多く存在します。
雪の結晶, ミツバチの巣, 亀の甲羅など。
六角形もまた安定した強い構造であり、この自然界の中で適用できる形状です。
東洋,西洋共に神聖な用途として使われる六芒星:
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「ソロモンの指輪」の伝説では、ソロモン王は魔力を持つ指輪で悪魔を従え、天使を使ってエルサレムの神殿を建立しますが、その指輪には、六芒星が刻まれていたそうです。
東洋でも西洋でも、六芒星が魔除けなど、神聖なものの役割で使われています。
*エジプトに限らず、古代の世界では、三角形には意味があり、また、三角形を組み合わせることにも意味があったのではないでしょうか?
筆者の見解:
ピラミッドが、墓であったか否かは断言できませんが、神聖な儀式を行うための建物であり、ファラオたちが、生前に神への敬いと自らの権力を示すために建設したものだと考えています。
また、多くの研究で示されている通り、建物の向きや、保存性のある内部構造, 三角形や四角錘の形状には、何らかの深い意味があると考えています。