今回ご紹介するのは、「日本文学のおすすめランキング」にいつも上位で登場する文豪 夏目漱石です。
数々の名言も残している漱石ですが、「もっとも漱石らしいと感じる名言」と漱石の死の原因, 現在の夏目家についてご紹介いたします。
漱石の名言:
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夏名漱石作「こころ」より
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ
とかくに、人の世は住みにくい」
出典:夏名漱石作小説「草枕」の冒頭部分
どんな意味?:
日常生活において知識をひけらかす態度で接すると煙たがられ、人情をもとに生きていくと、どうしても流される生活になる。お互いが意地を通すとどうしても、窮屈になってしまう。
人間関係は難しいものだ。
こんな意味になるのではないでしょうか?
発展して、「色々な人がさまざまに絡み合っているこの世を送るには「智」、「情」、「意」のバランスが必要。」という教訓だと書いている評論もあります。
漱石の死因と理由:
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漱石の死:
1916年12月9日 胃潰瘍に伴う腹部体内出血を起こし「明暗」を執筆中に東京の自宅で死亡。(胃潰瘍の状態が長かったことから胃がんであった可能性もあると言われています。)
49歳でした。
漱石の闘病生活:
漱石は、亡くなるまでに大きな胃潰瘍を5回以上引き起こしています。
最初な大きな病状は、朝日新聞に入社して、本格的に作家を目指した1907年(明治40年)以降です。
亡くなる6年前、漱石が43歳のときには、やはり胃潰瘍の入院や治療の後、伊豆修善寺の旅館を訪れ転地療養を行っていましたが、19日目、漱石は大量に吐血して倒れ意識を失います。
後に漱石は、この時のことを「多量の血を一度に失って、死生の境に彷徨していた」と語っています。
漱石が胃潰瘍を繰り返した理由は?:
数多くの優れた小説を世に送り出した漱石、内面が繊細であったことは容易に想像できます。
その分, ストレス耐性がなく、神経衰弱気味になることもしばしばあったと言われています。
皆さんの中にも、「ストレスを感じて無茶食いして、食べた後には胃の負担を感じるものの、またストレスで過食してしまう。」そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
漱石も過食や糖分依存に陥っていたと言われています。
ストレスを感じると大食いをして、糖分依存にも陥っていたと言われています。
ジャムを瓶のまますくい食いしたこともあるそうです。
胃に負担をかけ消化機能は良好ではなかったはずです。
死の直接原因は腹部内出血ですが、出血を引き起こした原因のひとつが胃潰瘍でした。
病気と共に生きた漱石:
幼いころからの疾患:
漱石の病は、胃潰瘍だけにとどまりませんでした。
3歳の時には、痘瘡(とうそう)にかかり、17歳には、虫垂炎(ちゅうすいえん)にかかります。
成人した後は痔も患い、多くの病院に通った記録があります。
精神疾患にも悩んでいた漱石:
「胃弱・癇癪・夏目漱石」を執筆した小説家の山崎光夫さんによると、若いころから周りに自分は、「ミザンスロピック病(厭世病)」だと語っていました。
確かに後年の漱石の作品さは、深く、重いものが多いのですが、「坊ちゃん」や「三四郎」を書いた初期のころから漱石が悩んでいたとは、思いませんでした。
本人が自覚するように、周囲も漱石のことを神経質で癇癪持ち(かんしゃくもち)であると感じていました。
現代医学の言葉で表現すると、漱石は、うつ病と統合失調症であったとも言われています。
実際につらい経験もしています。
・漱石は、作家になる前に、国費留学生となって英国文学研究のために渡英しますが、人種差別などのカルチャーショックに悩み、英文学を学ぶ意味にも疑問を感じかなり、ひどい状況だったようです。
・政府から英国から戻された漱石は、一高と東京帝国大学で教鞭をとりますが、漱石が強く叱責したことが一因となり、ある学生が自殺してしまい、それにより漱石の神経症は顕著になっていきます。
家庭でも八つ当たり、外出しても日常的にトラブルを起こしていた。とも言われています。
「気を病むから病気になるのか」, 「病気を抱えているから、気持ちを病むのか」どちらが本当かはわかりませんが、優れた才能や社会的評価とは裏腹に漱石は心身ともに辛い人生を歩んだきたのでしょう。
現在の夏目家:
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漱石が残した文章から、漱石の妻,鏡子さんは、「何もできない,しない」悪妻だった。と伝えられてきました。
私も学校で先生から「漱石は悪妻を持ったからこそ、あれほど素晴らしい小説が書けたのだ。」と聞いたことがありますが、見方を変えて、漱石の家族からは、「鏡子さんが神経症を持ち、時にはDV夫になる漱石を励まし、なだめ、付き添っていた。」というのが本当かもしれません。
漱石は子宝にも恵まれ、2男5女, 合計で7人の子供たちを育てます。
長男の夏目純一さんはヴァイオリニストになり、純一さんの長男は漫画評論家の夏目房之介さんです。
漱石の次男の夏目伸六さんはエッセイストになり、他の娘さんたちやお孫さん、曾孫さんもそれぞれの分野で活躍中です。
参考元:http://kakeizunotobira.denshishosekidaio.com/2019/06/22/post-13457/
筆者の見解:
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今でも、広く読まれている漱石の小説の数々。
全世界でも、日本文学を学んでいる学生さんにも漱石の作品は読まれています。
どうしても、漱石のきれいな文章や構成のうまさ、時代の雰囲気を伝える力、博学でそして何よりも人間の内面を深く洞察する能力を持つスーパースターとしての漱石に目がいきがちですが、体を病み心が疲弊して普通の人間のような弱さを持つ漱石に親近感を感じています。
先にご紹介した漱石の名言のとおり、あるいは繊細だからこそ普通に人以上に、漱石は人間関係のわずらわしさやこの世の生きにくさを強く感じていたのかもしれません。
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ
とかくに、人の世は住みにくい」(夏目漱石)